本の日記

好きな本をネタに日々を書き留める、気まぐれ日記。

恋愛あるある

“遠い海 井上靖

 

恋愛小説。

このところ、リアルもバーチャルもフィクションも、とんと恋愛に触れていなかった。

久しぶりの恋愛小説。

しっとりした恋愛モノかと思いきや、男女っていうか女のネチネチ感が前面に出て、ぐるり一周して着地しましたとさ。

読み始めは、どんだけ昭和やねん!と突っ込んでしまったけど、没入してくると心の動きにあるあるーってなってしまった。

 

タイトルの「遠い海」も、後半にガッテン。

 

一人、遠い海を持たない出演者がなんとも言えず蚊帳の外で、読後に可哀想になってしまう。みんなあるはず、遠い海。恋愛じゃなくっても。実在の人物かのように、彼女の人生に想いを馳せてしまうのです。

それぞれが抱えて、しまい込んでいる寂しさが透けて見える小説は食が進むね。

 

寺山修司の詩があったような、なかったような。

海には一滴の涙がまじっている、って。

 

恋愛は、短いスパンに酸い甘い、心の浮き沈み、明暗が凝縮されていて良いものですな。次回はもっとハリウッドなバタ臭い胃もたれしそうな恋愛モノ読んでみよーっと。

遠い海 (1982年) (文春文庫)

遠い海 (1982年) (文春文庫)

 

 

未知の味、食べたい、読みたい。

旅行者の朝食 米原万理”

 

食べ物の話に目がない。

しかも、米原さんの本である。

以前に読んだ「真夜中の太陽」では、爽快なエッセイの数々にしびれたので、米原さんの本に間違いなしと通勤にお供していただく。

 

経験も知識も恐ろしく広く深くて、縦横無尽に世界が繋がり、そこにユーモアとアイロニーという名のスパイスがガリガリっとふりかけてあって、もう大満足。

 

中でも、ハルヴァなるお菓子の章は、もう、よだれまみれなのです。

米原さんが食べた幻のハルヴァは、絶品だったそう。元々は中東が元祖のようだけれど、ロシアでも手に入ったらしい。しかし、それはヌガーのようなもので、ハルヴァであってハルヴァにあらず。

食べたことも聞いたこともなかったのに、ナゼだろう、この間違いない美味しさへの確信は。。。

食って、言葉をどれだけ尽くしても、一口に及ばないのよね。。。あぁ、そのティースプーン一匙を味わいたいと悶えてしまう。

 

百聞は一口にしかずとはいえ、もし各国の人が自分の大好きな食べ物を言葉だけで書き記したら、どんなことになるだろう。美味しさを伝えるべく言葉を尽くして描写したら、相当に熱量高い本になりそうだな。そんな文章が集まった食べ物辞書ができたらかなり読みたいな、買っちゃうな。ジュルリ。

 

旅行者の朝食 (文春文庫)

旅行者の朝食 (文春文庫)